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  7. 第3章 C型肝炎の抗ウイルス(インターフェロン)療法について

第3章 C型肝炎の抗ウイルス(インターフェロン)療法について

1.C型肝炎のインターフェロン治療効果に影響する因子

 C型肝炎に対するIFN治療の成績はこの10年間で飛躍的に向上していますが、治療を受けたすべての患者さんでウイルスの駆除が成功するわけではありません。IFN治療効果を著効(IFN治療後もウイルスが血液の中で陰性を持続する、すなわち完全に除去された)、再燃(治療中は血液中のウイルスが消失、ALTが正常化するが、治療終了後にウイルスもALTも元の状態に戻ってしまう)、無効(血液中のウイルスの消失もALTの正常化も得られない)に分けて判定していますが、これまでの経験から、治療効果に影響する因子が判ってきました。治療効果はウイルス因子、治療因子、宿主(患者)因子の3つに大別されます。

治療効果の判定
IFN治療効果に影響する因子

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i.ウイルス因子

1 C型肝炎ウイルスの遺伝子型
ウイルス因子
 C型肝炎ウイルスは、大きく6つの遺伝子型に分けられています。日本人のC型肝炎の患者さんウイルスの遺伝子型は、大部分が1b型、2a型、2b型に分類されます。IFNの効きやすさは2a型>2b型>1b型の順になります。

 C型肝炎ウイルスの量を知るために、血液中のC型肝炎ウイルスの遺伝子量(HCV RNA 7) )を測定します。血液中のHCV RNA量が血液1mlあたり10万未満(低ウイルス量)であれば、IFN単独療法で高率に著効が得られます。一方10万を越える(高ウイルス量)と、特に遺伝子型が1b型ではIFN単独療法の効果が不良になります。遺伝子型とウイルス量を合わせたIFNの効きやすさは、
2a,2b低ウイルス量>1b低ウイルス量>2a,2b高ウイルス量>1b高ウイルス量
のようになります。日本人の場合はC型肝炎の患者さんの約7割が、IFN治療の効きにくい1b型高ウイルス量になります。
C型肝炎ウイルスの遺伝子型
2 C型肝炎ウイルス量(HCV RNA 7) )量
HCV RNA量と臨床効果
 血液中のC型肝炎ウイルス量の多い、少ないが、治療効果に関連します。血液中のC型肝炎のウイルス量(HCV RNA量)はPCRという方法で測定し、○○logIU/mlという単位で表示します。HCV RNA量が増えれば増えるほどIFN治療は効きにくくなります。
3 C型肝炎ウイルスの遺伝子変異 8)
HCVの遺伝子変異
 遺伝子型1型では、C型肝炎ウイルスの遺伝子の一部の変異により治療の効果が変わってきます。特にコアの部分の70番のアミノ酸が変異すると、IFNが効きにくくなることが判っています(コアのアミノ酸の変異を調べる検査は保険適応外です)。

 C型肝炎の治療前には遺伝子型、ウイルス量、コアアミノ酸変異(1型の場合)が治療法の決定、治療効果予測に必要な情報となります。

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ii.治療因子

1 充分な薬の量を内服・注射すること
治療因子
 C型肝炎に限らずどんな病気でも、必要とされる薬をしっかり服用することが、治療効果を上げるためには重要です。C型肝炎でもPEG-IFN+リバビリン併用療法を行う場合には、体重等で決められた薬の量を、予定の期間しっかり投与することが必要です。予定の治療期間の80%以上、予定の投与量(インターフェロン・リバビリン両薬剤)の80%以上を達成することが、著効を得るために重要です。
2 治療期間
ウイルス消失時期と著効率
 1型あるいは2型高ウイルス量症例のPEG-IFN+リバビリン併用療法の治療期間は、1型では48週間、2型では24週間が標準となっています。1型高ウイルス量症例では、ウイルスの陰性化時期によって治療効果が異なり、HCV RNAの陰性化が遅れた症例では、標準の治療期間では著効が得られにくいことが判りました。このためHCV RNA陰性化時期により、治療を72週間へ延長する場合があります(後述)。

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iii.宿主(患者)因子

1 肝組織
宿主(患者)因子
 線維化(硬さ)は、肝生検9)で得られた肝組織を顕微鏡で観察して評価します。通常は1~4(1:軽度、2:中等度、3:重度、4:肝硬変)に分類し、線維化が進行(3~4)すると治療効果が悪くなります。同様に肝生検で肝臓の脂肪化も評価します。肝臓に脂肪が沈着していると、治療効果が悪くなります。
2 年齢・性別
 年齢別には若年者で治療効果が良好で、年齢が進むにしたがって著効が得られにくくなります。性別では男性の効果が良好で、年齢と性別からみると、高齢女性が最も治りにくくなります。
3 インスリン抵抗性
インスリン抵抗性別の治療効果
 インスリン抵抗性とは、インスリンの効果(血糖を下げる力)が落ちている状態です。インスリン抵抗性は簡単な血液の検査(空腹時のインスリンと血糖値)から調べることができます(HOMA-IR)。インスリン抵抗性が強くなると、治療効果が減弱し、治療期間を通じてウイルスが陰性化しない無効例が多くなります。C型肝炎ウイルスの感染自体がインスリン抵抗性の原因となっていますが、インスリン抵抗性の改善し、治療効果を向上させるためには、肥満の解消が最も大事です。
4 ヒト遺伝子多型(インターフェロン感受性遺伝子)
IL28B SNPの頻度
 人間の遺伝子DNAは同じ人間であっても一人一人僅かに異なっています。この遺伝子の相違の中で最も頻繁に見られるのが、塩基配列10)のある部分でA-TとG-Cの塩基ペアが1個だけ置き換わっている場合で、これを、SNP(Single Nucleotide Polymorphism:一塩基10)多型)と呼びます。病気の罹りやすさ、薬の効きやすさ、副作用の出やすさなどが一人一人異なることも、SNPに関連すると考えられています。
IL28B SNP別のPEG/RBV療法の効果
 最近の研究で、ヒトの19番染色体に位置するインターフェロン(IFN)の一種のIL28B遺伝子、及びその遺伝子周辺に存在する複数の遺伝子多型(SNPs)が、IFN治療の効果に関連していることが判りました。当科の症例を調べたところ、メジャーアリル(通常の遺伝子:TT)が67%、マイナーアリル(治療抵抗性遺伝子:TG/GG)が33%であり、PEG-IFN+リバビリン併用療法を行った症例中、TTでは治療中にウイルスが消失する著効または再燃が87%、一方TG/GGではウイルスの全く消失しない無効が64%という結果でした。

 すなわち事前にヒトの遺伝子(SNPs)を調べることにより、治療が効きにくい患者さんを、かなり確実に予測できるようになりました(治療が効きにくいだけで、全く効かない訳ではありません)。今後、C型慢性肝炎のテーラーメイド治療(個々の患者さんに合わせた治療)には、IL28B遺伝子SNPsが欠かせない情報になります。(現在はまだ保険適応の検査ではありません)

 C型肝炎に対する抗ウイルス療法(PEG-IFN+リバビリン併用療法)においては、ウイルス因子、治療因子、宿主(患者)因子が全て合わさり、最終的な治療効果に繋がります。

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2.症例毎の治療法の選択

IFN,リバビリンの投与スケジュール
 2003年からIFN治療の治療期間の制限が撤廃されたこと、内服の抗ウイルス剤リバビリンの併用療法が可能になったことにより、個々の患者さんの状態に合わせた治療法の選択が可能になりました(テーラーメイド治療)。

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i.標準的なIFN単独療法

 通常は最初の2~4週間IFNを連日投与し、その後20~22週間週3回の投与(計48週間)を行います。この療法ではHCVの遺伝子型にかかわらず、低ウイルス量(10~20万以下)の症例では高い著効率が得られます(1b型70程%、2a、2b型>90%)。ウイルスの量が多くなる(20万以上)と1b型では5%程しか著効が期待できず、2a、2b型でも50%程度の著効率となります。

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ii.IFN短期療法

 遺伝子型2a、2b・低ウイルス量症例を対象にIFNを8週間投与します。原則8週間の間、IFNは連日投与を行います。短期間に集中的に治療を行うことになります。当科のデータでは90%以上に著効が得られ、短期間で治療を終えたい場合は有効な治療法です。

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iii.Peg-IFN単独療法

 ペグインターフェロン(PEG-IFN)とは、インターフェロン(IFN)にポリエチレングリコールという物質を結合させて、注射後のIFNの吸収・分解を遅らせて、血液の中のIFN効果が長期間持続するよう工夫されたIFNです。
 通常は週1回の投与になり、従来型のIFNの連日または週3回投与に比較して、患者さんの負担が大幅に軽減されます。副作用の問題から、現在は毎回のPEG-IFN投与前に必ず血球数(白血球、赤血球、血小板)の確認が義務づけられています。
 治療効果は従来型のIFNと同様で、遺伝子型にかかわらず低ウイルス量の症例では高い著効率が得られますが、1b型高ウイルス量では15%程しか著効が期待できず、2a、2b型高ウイルス量でも50~60%程度の著効率となります。

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iv.IFN+リバビリン併用療法

 2001年12月より、IFNと内服の抗ウイルス剤リバビリンの併用療法が可能となりました。IFNとリバビリン併用療法を24週間行うことにより、従来は5%程しか著効の期待できなかった遺伝子型1b・高ウイルス量の症例においても、20%程の著効が得られるようになりました。
 2003年12月より、IFNとリバビリンが48週間投与可能になり、IFNもPEG-IFNが使用可能になり、1b高ウイルス量症例で45~50%の著効が得られるようになりました。
2種類の抗ウイルス剤を併用することにより臨床効果は増強されましたが、両薬剤の副作用が合わさり、IFN単独療法に比較して副作用も強くなっています。C型肝炎ウイルスの排除という面では現在最も強力な治療法といえます。保険適応は高ウイルス量の患者さんが対象となりますが、再治療の場合は低ウイルス量の患者さんも適応となります。
 治療期間としては2a、2b型または1b型低ウイルス量症例では24週間、1b型高ウイルス量症例では48週間が標準となります。治療早期にウイルス(HCV RNA)陰性化が得られない場合(1b型高ウイルス量症例では12週以降、2型高ウイルス量症例では8週以降に陰性化)の場合、治療効果を向上させるため治療期間の延長をお勧めすることがあります。

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v.次世代の抗ウイルス療法(三剤併用療法)

 現在、HCV遺伝子の増殖に必要なたんぱく (プロテアーゼやポリメラーゼ)を阻害する新規治療薬が治験中です。特にテラプレビルというプロテアーゼ阻害剤にPEG-IFNとリバビリンを加えた3つの薬剤を併用(三剤併用療法)することで治療効果が飛躍的に向上することが、臨床試験の成績で示されました。テラプレビルは内服薬で、1日3回、12週間の服用となります。

 国内の臨床試験(札幌厚生病院、虎ノ門病院、広島大学の94症例)では12週間の3剤併用療法+12週間のPEG-IFN+リバビリン療法(合計24週間の治療:現在の標準治療の半分の治療期間)で、初回治療例は80%、PEG-IFN+リバビリン療法後再燃例は93.2%、PEG-IFN+リバビリン療法無効例でも32%で著効が得られています。
三剤併用療法の投与スケジュール
IL28B SNP Major(TT)では前治療の成績に関わらず治療効果は良好
IL28B SNP Minor(TG/GG)では前治療の成績が3剤併用療法の効果の指標となる
 また前述した患者さんのインターフェロン感受性遺伝子(IL28B SNP)の結果と合わせると、治療導入前に治療効果の予測がかなりの可能になりました。この次世代のC型肝炎治療である三剤併用療法は、2011年度には保険適応となる予定で、この治療法が登場すると、C型肝炎の抗ウイルス療法は大きく変わります。
一方で、非常に治療効果の強力な三剤併用療法は、貧血、皮疹、消化器症状などの副作用が従来の治療に比べて強く出現します。患者さんの年齢や貧血の程度によってはこの治療を推奨できない場合もありますので、詳細につきましては担当医にご相談ください。

 さらに次々世代のC型肝炎治療薬も現在開発途上にあります。我が国のC型肝炎の患者さんは諸外国に比べ高齢化していますので、より副作用の軽い治療が望まれています。IFNを必要としない2種類のウイルス合成阻害剤(内服薬)を組み合わせた臨床試験も進行中で、治療効果が強力で副作用が軽微であることが報告されています。実用化までは時間を要すると思われますが、将来有望な治療薬と思われます。三剤併用療法を含めた代表的な1b型高ウイルス量症例に対する抗ウイルス療法の成績を、図に示します。

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vi.特殊な症例に対する治療

1) 肝硬変に対するIFN療法
 従来は慢性肝炎に対してのみIFNが保険適応でしたが、現在ではβ型のIFN(フェロン)とα型のIFN(スミフェロン)が保険適応となっています。スミフェロンは在宅での自己注射が可能です。ただ全ての肝硬変の患者さんが対象になるのではなく、肝臓の機能がある程度保たれている(代償性)肝硬変であることが前提条件となります。
遺伝子型1b高ウイルス量症例の著効率
 HCVの遺伝子型が1型の場合は、ウイルス量の少ない(5 log IU/ml以下)患者さん(フェロン、スミフェロン)か、高ウイルス量であっても500kIU/ml未満の患者さん(スミフェロンのみ)が対象となります。遺伝子型が2型の場合はすべての患者さんが対象となりますが、IFNの投与方法や治療期間は個々の患者さんの条件に合わせて決めていくことになります。肝硬変の場合は個々の患者さんで病気の状態が大きく異なりますので、詳しくは担当医にご相談ください。
2) 肝炎沈静化をめざしたIFN療法
 IFN療法は主として原因療法として行われますが、IFNあるいはIFN+リバビリン併用療法にてもウイルス排除が得られなかった場合、肝炎の沈静化(肝硬変への進展抑制、肝癌発症抑制)を目的にIFN療法を行う場合があります。この場合は通常使用するIFNの量よりも少ない量を投与し、AST、ALT値をできるだけ低値に保つことを目標にします。治療は可能な限り長期間となります。
3) 精神神経症状(うつ病)が危惧される症例のIFN療法
 IFNの重大な副作用に精神神経症状(うつ病)があります(副作用の項を参照)。以前のIFN治療でうつ症状が出現した、あるいは現在うつ病を治療中であるために、IFN治療を受けていないC型肝炎の患者さんがいます。このような患者さんに対してはβ型のIFNを用いて治療を行います。
 β型は精神神経症状の出にくいIFNであり、さらに2009年より、リバビリンとの併用投与も保険適応となり、1b型高ウイルス量の患者さんでも有効性が向上しました。うつ病の既往のある患者さんには、精神科の先生と連携して治療にあたります。
4) IFNが適応にならない患者さんに対する治療
 高齢や他の病気の合併症のために抗ウイルス療法が施行できない場合、あるいはIFNの効果が期待できない場合は肝庇護療法で肝炎の進行を抑えることになります。 肝庇護療法の目標は、ALTを可能な限り正常値に保ち、肝炎の進展を予防することです。この場合のALTの目標値は、初期の肝炎(線維化F1)では持続的に基準値の1.5倍以下、進行した肝炎(線維化F2以上)では極力正常値ALT≦30IU/Lになります。実際には内服薬(ウルソなど)、強力ネオミノファーゲンC、除鉄療法(瀉血、鉄制限食)などから、単独あるいは複数を併用して治療にあたることになります。治療法の選択は患者さんごとに異なりますので、薬剤の投与量や組み合せについては担当医にご相談ください。
◆治療法選択の実際
 主に遺伝子型とウイルス量を基準にして治療法を選択することになります。
現在、当科で主に行われている治療はIFN短期療法、PEG-IFN単独療法、IFN+リバビリン併用療法(大部分がPEG-IFNを使用)の3つの方法です。三剤併用療法が保険適応後は、1b型高ウイルス量症例に対しては三剤併用療法が第一選択の治療となります。また初回の治療が著効にならず再治療を行う場合は、初回の治療より強力に行うことを原則としています。

 以上は当科の治療法選択の指針であり、患者さんの個々の状況により必ずしも固定したものではありません。実際の治療については主治医とご相談ください。

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3.IFN治療の副作用

IFN治療の副作用11)
インターフェロンの副作用
 IFN治療を受けたいが副作用が心配でなかなか決心がつかない、という患者さんも多いと思われます。IFNは体内に存在するサイトカインと呼ばれる蛋白の一種ですが、C型肝炎の治療時には大量に投与されるため、さまざまな反応を引き起こし、これが副作用となってあらわれます。副作用には薬等によって軽減できるものも、対処が困難なものもあります。IFN治療を継続し、著効を得るためには、あらかじめ予想される副作用を、患者さんご自身が知っておくことが大事です。

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i.ほぼ全例で見られる副作用

1.インフルエンザ様症状

 発熱、筋肉痛、関節痛、頭痛といったインフルエンザにかかったときと同じような症状で、食欲不振、嘔気・嘔吐などの消化器症状を伴うこともあります。C型肝炎の治療では90%以上の患者さんにあらわれる症状です。ペグ型のIFNの場合は通常3~4日間症状が続きます。発熱、筋肉痛、関節痛に対しては消炎鎮痛剤を投与することが有効です。これらの症状は、慣れの現象で自然に軽快する患者さんが多いのですが、一部には慣れの現象が見られず、発熱が持続する患者さんもいます。

2.白血球,血小板減少

 治療開始後1~2週間程減少し続けますが、その後の減少はほとんど見られません。治療前より白血球、血小板の少ない患者さんでは注意が必要です。治療終了後は速やかに元の数に戻ります。

3.脱毛

 脱毛は、IFN投与開始後1~2ヵ月後に始まり、3~4ヵ月でピークになります。IFN治療終了後、毛髪が生えはじめますが、回復してきたと自覚するには2~3ヵ月くらいかかります。おおよそ6ヵ月くらいで元の状態に戻ります。

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ii.まれにしか見られないが重篤な副作用

1.甲状腺機能障害(1~2%)

 甲状腺のホルモンが異常に多く分泌される場合(甲状腺機能亢進症)と、逆にホルモンの分泌が悪くなる場合(甲状腺機能低下症)があります。甲状腺ホルモン等を治療前に測定することで、ある程度発症を予測することが可能です。発症した場合はホルモン分泌を抑制する薬や甲状腺ホルモン剤を投与することになります。

2.眼底出血(0.5%~)

 報告によって頻度はさまざまですが、あまり高くはありません。症状を伴うことは少ないのですが、重症になると視力低下が出現します。血小板減少、糖尿病、高血圧、膠原病、血液疾患がある場合は注意が必要です。当科では治療開始前、その後は1ヵ月ごとに眼科での検査を実施しています。

3.間質性肺炎(0.2~0.3%)

 頻度は低いのですが非常に重篤な副作用です。原因は不明ですが、漢方薬の小柴胡湯との併用で発症率が高まるとされています(現在はIFNと小柴胡湯の併用は禁忌になっています)。症状は乾いた咳と労昨時の息切れです。このような症状が出た場合はすぐ主治医に連絡してください。治療はIFNの中止と副腎皮質ステロイドの投与を行います。

4.精神神経障害(1~2%)

 IFNの直接的な脳血管細胞への作用によって引き起こされる精神神経症状と、精神神経症状の素因、とくにうつ病などの病歴がある方に起こる精神神経症状があります。一般的に素因がある場合、IFN治療は禁忌とされています。治療中に精神神経症状が出現した場合は精神科医に相談し、治療継続の可否を決めています。12)

5.その他の副作用
  • 糖尿病、またはその悪化
  • 不整脈,心不全など
  • 末梢神経炎
  • 皮膚症状
  • 腎障害
 などがあります。治療期間中は定期的な血液検査、臨床症状の聞き取りなどで注意深く観察していきます。

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iii.PEG-IFN+リバビリン併用療法で見られる副作用

1.溶血性貧血

 リバビリンは内服すると全身に分布しますが、とくに赤血球はリバビリンが蓄積しやすく、そのために赤血球が壊れて、溶血性の貧血が起こります。程度の差はありますが、IFN+リバビリン併用療法のときには必ず出現する副作用です。高齢者・腎機能障害者で強く出現する傾向があります。治療を開始後4~8週間で貧血が強くなりますので、血液データを見ながらリバビリンの内服量を調節していきます。リバビリン投与を中断することなく継続することが、治療効果を高めるために重要です。治療前から赤血球(ヘモグロビン)が少ない場合は、リバビリンが使用できないこともあります。
当科では独自の方法で、リバビリンの全身クリアランス(CL/F)からおのおのの患者さんに最も適したリバビリンの投与量を設定し、貧血の副作用を可能な限り軽減するように努めています。

2.消化器症状

 PEG-IFN+リバビリン併用療法時に出現する消化器症状としては、食欲低下、嘔気、胃部不快感、味覚障害などがあります。症状が出現した場合は胃薬等を使用しますが、症状を完全に消失させることは難しく、とくに食欲低下は治療期間を通じて持続することが多く、当科のデータでは24週間の治療で平均4.6キロ体重が減少しています。

3.皮疹

 約半分の患者さんに皮疹が出現しています。程度は体の局所にとどまるものから全身に拡がるものまでさまざまです。軽度の場合は無治療で経過を見ますが、症状により軟膏、内服薬を使用しています。皮膚科の専門医の診察を必要とする場合もあります。

4.その他(治療期間中と治療後6ヵ月は避妊が必要です)

 リバビリンは動物実験で、胎児に奇形が発生しやすいことや精子の異常が報告されています。このため妊婦はこの薬を服用できません。妊娠している可能性のある女性は、妊娠検査によって妊娠していないことを確認しなければ服用することはできません。男性の場合はリバビリンの精子への移行の可能性がありますので、パートナーが妊娠または妊娠する可能性がある場合は、服用中および服用終了後6ヵ月間は必ずコンドームを使用しなくてはなりません。

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iv.三剤併用療法(PEG-IFN,リバビリン、テラプレビル)で見られる副作用

 基本的にはPEG-IFN+リバビリン併用療法で見られる副作用と同様ですが、血液の副作用(貧血、血小板減少)がPEG-IFN+リバビリン併用療法に比較して高度に出現しますので注意が必要です。貧血・血小板減少の程度によっては薬を減らしたり、休薬したりすることがあります。発疹などの皮膚症状はPEG-IFN+リバビリン併用療法でもよく見られる副作用ですが、三剤併用療法の場合は重篤な発疹が出現する場合もあり、このような時は皮膚科の先生と相談の上、治療を中止することもあります。

次のような症状の場合は、できるだけ早く主治医にご連絡下さい。
  • 不眠、イライラ、気分の落ち込み(うつ病などの精神神経症状)
  • 息切れ、乾いた咳、微熱(間質性肺炎)
  • 出血傾向(歯茎からの出血、軽微な打撲などで青アザができるなど)
  • 動悸、汗をかきやすい、むくみ(甲状腺機能異常)

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3.IFN治療の実際

 C型肝炎ウイルスの感染が診断された場合、遺伝子型、ウイルス量、血液検査、画像診断(CT・MRI)などにより、抗ウイルス療法の適応を判断します。
 肝機能障害が高度に進行している場合(非代償性肝硬変)や他の重症の合併症を持っている場合は、IFNあるいはIFN+リバビリン療法が適応外となります。高血圧や糖尿病を合併している場合は、充分病気をコントロールしてから抗ウイルス療法を行うことになります。また、患者さんの個々の病状や年齢、ライフスタイルを考え、治療方針を検討します。

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i.抗ウイルス療法の導入

 抗ウイルス療法の導入は副作用も出現することから、原則入院で行っています。IFNを使用する場合の入院期間は10日~14日間です。当院では一部のIFN療法においては、クリニカルパス(予定表)を用いて入院から退院までの治療・検査・生活のスケジュールをお知らせしています。事前に治療スケジュールをお知らせし、治療や生活上の疑問・心配をお聞きし、治療期間中の苦痛や不安を最小限にすることを目的としています。
 当院では、入院中に肝生検を行いますが、肝生検について不安や疑問がある場合は外来主治医にご相談ください。

*肝生検は、肝臓の組織を採取し、肝臓の線維化の有無・程度を診断する検査です。肝生検は外来では実施が困難な検査のため、入院で行います。
他の病気で抗凝固薬、抗血小板凝集薬(血液をサラサラにする薬)を服用している方は、必ず医師に内服薬についてご相談ください。

*抗ウイルス療法の初回治療は原則入院で導入しています。治療の目的、治療内容、患者さんの個々の状態によっては外来で導入する場合もありますので、主治医とご相談ください。

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ii.抗ウイルス療法(入院でのIFN療法)の流れ

 【外来受診】
外来受診時にIFN療法を実施するか決定します。
    

【入院予約・入院前検査】
  • 入院前検査では、採血・画像診断・レントゲン・心電図・眼科受診等を行います。
  • 外来看護師が入院手続き、治療スケジュール、注意事項等について説明します。
  • 現在服用中のお薬について確認します。
    

【入院】
入院期間は約10日~14日です。入院中に肝生検を行います。
入院期間中はIFN療法による副作用の有無や程度を確認し、辛い症状が軽減できるよう対応します。また副作用が出現した時の対処方法や日常生活の注意点について説明します。
    

【退院前日(退院時オリエンテーション)】
外来看護師より、退院後の生活・治療スケジュール・外来治療等について説明があります。
    

【退院】
退院後は、治療スケジュールに沿って治療を継続します。
    

【外来受診】
  • 医師の診察、看護師が体調について確認します。
  • IFNは、治療方針に基づき注射します。
  • 治療内容や副作用の有無、程度によって、通院の間隔やIFNの注射の回数は異なります。

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iii.入院中の生活について

●検査

入院中は、肝生検、採血を行います。

●治療・注射

PEG-IFNは、週1回注射を行います。PEG-IFNは皮下注射で投与します。皮下注射の場合、治療による副作用から注射部位が赤くなり痒みが出現する場合があるため、皮下注射が安全に行える部位を毎回確認し実施していきます。
その他のIFNは、治療方針によって投与回数や投与方法が異なります。

●治療・内服

治療方針によって、内服薬を併用する場合としない場合があります。リバビリン、テラプレビルを併用する場合は、治療開始時に医師や薬剤師より服用方法について説明があります。副作用の程度により、内服の量を変更したり中止したりする場合があります。

●行動・入浴

肝生検の後3時間はベッド上で安静となりますが、それ以外の制限はありません。調子の良いときは、外出・外泊をしてもかまいません。入浴はできますが、発熱の状況によりシャワー浴となります。

●食事

肝生検当日は制限がありますが、その他は制限がありません。食欲がないときは看護師に相談してください。主食をお粥やパン、麺類等に変更できます。

●説明・指導
  • 医師から検査、治療の目的や方法、副作用等の説明があります。
  • 看護師は医師からの説明や内容について、不安や疑問な点がないか確認します。また、日常生活の注意点について説明します。
  • 薬剤師は治療スケジュールや内服方法、副作用に対しての対処方法を説明します。
  • 退院前には、外来看護師が退院後の治療スケジュールや外来受診方法、体調が悪いときの相談方法について説明します。退院後の生活について、不安や疑問があればご相談ください。

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iv.入院中によく見られる副作用とその対応

■ インフルエンザ様症状
<発熱>
 発熱があれば知らせてください。アイスノンで頭を冷やしたり、解熱剤の座薬を使用します。
個人差がありますが、入院中に自分の発熱のリズムをつかむことが大切です。発熱による脱水予防のため、水分を十分に摂ってください。

<関節痛などの痛み>
 発熱がなくても体の節々が痛くなることがあります。つらいときは我慢せず看護師に知らせてください。痛み止めを使っていきます。

<食欲不振>
 個人差がありますが、熱のないときに食事をとるなど、工夫が必要です。看護師にご相談ください。

<体重減少>
 発熱や食欲不振により体重が減少することがあります。入院中は毎週1回朝食前に測定しています。

■ 血球減少(白血球減少、血小板減少、溶血性貧血)
  • 血小板が減少すると皮下出血、鼻血、歯肉出血がおこりやすくなります。歯ブラシを柔らかいものに変えてください。また、体に傷を作らないように気をつけてください。
  • 白血球が減少すると細菌に対する抵抗力が低下します。日ごろから、手洗い、うがいで感染を予防していきましょう。
■ 皮膚症状
 じん麻疹様の赤い斑点や発疹、痒みがでることがあります。症状がひどい場合は主治医の診察後、皮膚科を受診していただくことがあります。

■ 目の症状
 まれに眼底出血などをおこす場合があるため、治療前・退院前に眼科受診をします。眼底の検査は眼科医の指示により、治療期間中は定期的に行います。

※症状については、いずれも個人差があります。
気になる症状があれば、遠慮なく主治医や看護師に相談してください。

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v.外来でのIFN治療

外来注射時の流れ
  • 退院してからのIFNの注射と、定期的な診察と検査を行います。
  • 2~4週に1回、診察と採血を受ける患者さんが多いです。
  • 採血検査は治療方法や病状によって異なり、診察前に行う場合、診察後に行う場合、毎回の注射前に行う場合があります。
■受付について
  • 8:00~11:15、12:00~14:15の時間帯は再来自動受付機にて、患者さんご自身で受付をした後、消化器科外来へ診察券を提出してください。
  • 上記以外の時間は直接消化器科外来に診察券を提出してください。


■消化器科外来看護師から患者さんへ
  • 治療中の不安や疑問、気になる症状などがあれば、どんな小さなことでも遠慮せずに、すぐに主治医や看護師にご相談ください。
  • ご質問・ご相談は何度でもお受けします。充分に肝炎の病状・治療について理解・納得した上で治療を受けましょう。
  • 注射を安全・確実に行うために、当院では注射を原則として8:30~17:00までの間でお願いしています。
  • 平日の混雑時や夜間休日の注射の際、通常よりも時間がかかることがありますのでご了承ください。

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vi.IFN治療中の経過観察

治療中は効果と副作用について経過をみていくことになります。
  • 治療中はAST/ALT値は改善することが多いのですが、逆に悪化する場合もあります。C型肝炎ウイルスに対する効果とAST/ALT値の変動は必ずしも一致しません。AST/ALT値の悪化の程度によっては、治療を休んだり中止したりする場合があります。
  • 経時的に血中のウイルス量(HCV RNA)の変動を見ていきます。HCV RNAが早期に血中から消失すると高い著効率が得られます。遺伝子型1b高ウイルス量症例に対する48週間のIFN+リバビリン併用療法では、治療12週目までにHCV RNAが陰性化した症例では高率に著効が得られます(70~ほぼ100%:陰性化の時期により異なります)。逆に治療開始から36週目までにHCV RNAが陰性化しなければ著効は得られません。治療12週目までにHCV RNAの陰性化が得られなかった場合は、その後のHCV RNAの推移から治療期間の延長(48週間から72週間へ)、または効果が期待できないと判断された場合には治療継続の可否を相談いたします。
  • 白血球、ヘモグロビン、血小板数を定期的に測定し、減少の程度によってはIFNあるいはリバビリンを減量したり、中止したりします。
  • 患者さんの自覚症状(発熱、倦怠感、消化器症状、精神神経症状など)を確認し、適切な対応をとります。

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vii.IFN治療終了後の経過観察

IFN治療終了後、血球数は速やかに改善し、消化器症状・全身倦怠感なども徐々に消失し、体調的には治療開始前の状態に戻ります。

1.著効・非著効の判定

 血液検査では肝機能(AST、ALT)、HCV RNAを経時的に調べて行きます。治療終了後6ヵ月間HCV RNAが陰性を持続した場合、著効(C型肝炎ウイルスの完全駆除)13)と判定します。治療終了後にウイルスが再出現した症例(非著効)でも、肝機能が正常を長期間持続する場合もありますので、しばらくは経過観察を行います。IFN治療によって著効が得られなくとも、治療したことが全て無駄になる訳ではありません。C型肝炎ウイルスが陽性であっても、肝炎の沈静化(ALT値の改善)や、肝がん発症を抑制する効果があります。

2.著効例の経過観察

 著効例では肝機能の改善を経時的に見ていきます。通常は受診間隔をだんだん開けていきます。著効例では、その後は肝機能の悪化や肝硬変への進行は起こりませんが、肝がんの危険性が完全になくなった訳ではありません。著効後の肝がんは、IFN治療終了後5年以内に発症することが多いのですが、さらに時間がたってからの発症もみられます。著効判定後も、10年間は定期的な画像診断(エコー、CTを年1回から2回)が必要です。

3.非著効例の対策

 残念ながら非著効となった場合は、その後の治療を主治医とご相談ください。肝炎が再燃した場合は、IFN再治療、肝庇護療法(ウルソ、強力ネオミノファーゲンC、瀉血など)から選択することになります。近いうちに導入される新規薬剤(テラプレビル)を組み合わせた三剤併用療法では、PEG-IFN+リバビリン併用療法の再燃例では約90%で、無効例でも30~40%で著効が得られることが判っています。

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最終更新日:2011年09月02日

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