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肝細胞癌に対するミリプラチン動注併用マイクロ波焼灼術

はじめに

肝硬変、慢性肝障害の方で、肝臓に腫瘍(肝細胞癌)が発生することがあります。肝細胞癌の治療には外科手術、穿刺局所療法(ラジオ波・マイクロ波焼灼術)、経カテーテル的治療、薬物治療などの治療法があり、年齢や肝機能、肝細胞癌の位置や個数・サイズなどの条件に応じて、適切な治療方法が選択されます。
肝細胞癌の治療に対して、穿刺局所療法は外科手術に次ぐ、もしくは同等の高い局所制御率が得られる、という位置づけになっています。また穿刺局所療法は外科手術と比べ全身麻酔が不要で、数㎜程度の創(きず)が数個以内で済み、体への負担は軽いと考えられます。
放射線科では穿刺局所療法、経カテーテル的治療を担当していますが、当院では中でも
マイクロ波焼灼術(MWA:Microwave ablation)に特に力を入れて治療を行っています。



マイクロ波焼灼術(MWA)の特徴

当院では「Emprint ablation system」と呼ばれる装置を用いて治療を行っています。この装置は2017年から日本でも使用可能となった新しい装置であり、2018年7月から導入しています。
CTや超音波の画像を見ながら肝細胞癌に「アンテナ」と呼ばれる針を挿入し、熱を発生させ腫瘍を焼灼(焼き殺すこと)します。
従来のラジオ波焼灼術(RFA)と比べると1回で焼灼できる範囲が広いため治療時間を短縮できる、焼灼する範囲を調整しやすく過度・過小な治療を避けやすい、といった特徴があります。また従来のラジオ波が苦手とする場所(太い血管の近く)の病変に対しても治療効果が期待されます。この様な利点から当科ではほとんどの肝細胞癌はラジオ波焼灼術RFAではなくMWAで治療しています。


適応

原則、「3㎝以下、3個以内」の肝細胞癌がMWAの治療対象となります。また外科手術が難しい方(高齢、肝機能低下、心機能低下など)に対しても、MWAを行うことができます。


当院におけるMWA治療方法

より確実にMWAを完遂させるため、以下の方法で治療を行っています。
まず、足の付け根の動脈からカテーテル(細い管)を挿入し、肝細胞癌の近くの動脈まで進めます。カテーテルからミリプラチン+リピオドール(抗癌剤+油性造影剤)という薬剤を注入します。これにより腫瘍が画像で見えやすくなるため、正確な位置にアンテナを挿入すること(穿刺)が可能となります。
続いて、CTや超音波の画像を見ながら腫瘍に向けてアンテナを穿刺し焼灼を行います。腫瘍のサイズに応じてアンテナの位置を変えて焼灼を追加します。当院では主にCTの画像を見ながら穿刺を行っています。CTは超音波の画像に比べて客観性が高いため、より正確な位置への穿刺が可能であり、焼灼される範囲も確認しやすいためです。また超音波では見えにくい部位にある腫瘍も、CTでは十分に視認することができます。
治療の翌日に造影CT検査を行い、十分な範囲が焼灼できているかを確認します。もし焼灼範囲が不十分な場合、その場所から性質の悪い癌が再発してしまう可能性があるため、数日後に追加の焼灼を行っています。


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ミリプラチン+リピオドール注入後。
肝細胞癌に薬液が沈着。

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肝細胞癌に薬液が沈着しCTで良好に確認できる。
これを目印に予定の位置にアンテナを穿刺。

写真

治療翌日の造影CT。
腫瘍の周囲に十分な焼灼範囲を確保できた。



合併症

発熱、腹痛、倦怠感、食欲低下、一時的な肝機能低下といった症状が出る場合があります。これらの症状には個人差があり、数日から1週間程度で治まることが多いです。また頻度は高くありませんが腹壁の熱傷、出血、気胸、胆管炎や肝膿瘍といった合併症が起きる可能性も無い訳ではありません。


治療効果

当院ではこれまで100件を超えるMWAを行ってきました(2021年7月時点)。当院で以前行ってきたRFAと比べると短時間での治療が可能となっており、入院期間も短くなっています。

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最終更新日:2021年07月29日

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